2019年7月9日
特殊清掃の実例~相見積編
特殊清掃とは何かと言う方は、こちらをご覧ください。
実例1
高齢男性一人暮らしで犬が一匹
亡くなられてから2週間ほどで発見された模様
故人の趣味はメダカの飼育や繁殖であった様子で、40個に及ぶ水槽やメダカ専用の機材が置いてあった。
亡くなっていたのは玄関の前、ちょうどメダカ達が飾られている水槽のラックの前であった。
ご遺体は検察官が回収していたようだが飼い犬のビューティーちゃんは家に取り残され、我々が清掃に入るころには飼い主の布団の上で餓死していた。
この家の片付けと特殊清掃を依頼してきたのは、大家さんでこの現場は相見積だった。
スターチス含め3社見積もりで我々は一番最後に見積もりをすることとなった。
見積もり時、玄関先で亡くなっていたという前情報があったので、玄関を開ける時はかなり覚悟していた。
その覚悟とは裏腹にそこまでハエや蛆も沸いておらず、独特の『死臭』がするだけであった。
基本的には、特殊清掃が必要な現場では体液痕や生ごみに、蛆やハエ、ゴキブリなどが集り恐ろしい光景になっていることが多いのだが、この現場では少しハエが飛んでいるだけで、そこまでひどくはないと言う印象であった。
どうやら近隣住民や大家さん又、見積もりに来た業者が幾度となくドアを開けることですべて外へ逃げて行ったのではないかと思われる。
そして、それ以前にも大家さん達が近隣住民と共に殺虫剤で大分駆除したと聞き納得した。
今回見積もりで主眼をおくべきポイントは3つある。
- 水槽の量
- 亡くなった飼い犬の処理の仕方
- 近隣トラブル回避
この三点であった。
1つ1つ説明していこう。
水槽の量
こちらはかなり考えなければ見積もりの金額が大幅に変わってくる。
数個であれば簡単に他の処分費と混ぜて計算しても見積金額と実際の処分費はさほど変わらない。
しかし数が40個も50個もあれば話が変わってくる。
体積で捉え見積もりを出すと水槽の処分費だけで13万円も掛かってしまう計算となる。
明らかに高くなってしまった。
そこでイレギュラーではあるが計算の仕方を変更し、ガラス5枚を40個合計200枚と計算した。
その計算で処分費は大体6万円と相場付近に落ち着いた。
結果見積もり金額は388700円となった。 3DK の遺品整理としてはかなり高額である。
遺品整理兼特殊清掃の多くの場合が高額となってしまう。
それは何故か?
スターチスを例として説明しよう。
一般的な遺品整理・生前整理・特殊清掃の場合大まかな作業料金構成は人件費・梱包費・撤去費・処分費の合計で出され、そこに家電リサイクル料金や風呂釜外しなどのオプションが課金され、上記の合算金額から買い取りや調整値引きを行い、最終的な金額となる。
しかしそこに特殊清掃が加わると買取がつけられなくなり、結果すべて処分せざるを得なくなる。
なぜなら死臭や雑菌が付着している恐れがあるためである。
通常買い取り以外でも紙類や布(古着)などは処分せずリサイクルすることで、処分費を削減しているのだが上記理由と同じく、処分になってしまう。
そのため見積もり金額全体が高額となってしまう
ちなみにスターチスの買取可能品目は
日用品から骨董品、美術品や車まで様々である。
話を戻すが、問題の2つ目は
飼い主の布団の上で亡くなったまま放置されている犬の遺体の処理
まず思ったのが「警察よ、持って行ってくれ」である。
なぜ犬は良いのか、市や区へ連絡し連携を取り担当者が引き上げてあげればいいだけではないか。
なぜ人間の遺体ともに回収せず放置したのだろうか。
まったくもって理解できない。
しかし、そこに横たわっているのだからこちらで何とかしてあげるほかない。
こういったケースは非常にまれであるが確かに何度かは、経験したことがある。
こういった場合の対処法として間違いないのは、管轄の市役所か区役所に問い合わせることで、大抵の場合きちんと対応してくれる。
尼崎市の場合は透明か半透明の袋もしくは段ボールに入れてくれれば、回収するとのこと。
しかし、回収された犬はゴミと共に焼却されてしまう。
なんとも言えない気分ではあるが、こちらができる最大限のことはしたつもりである。
最後の問題は
近隣住民とのトラブル
集合住宅や入り組んだ古いアパートなどを片づけていると、たまに搬出している家財や家電を欲しがってくる住人がいる。
こちらとしても、処分や積み込みの負担が減ったりするので喜んで差し上げたい、のだが
故人様またはご依頼者様との関係や繋がりが分からぬままに勝手に渡すわけにもいかないし、ましてや許可を得ないまま渡すなどは決してすることはできない。
今回の尼崎の現場は向かいと横に住まわれている方が見積もり時からガンガン家に入ってくる。
これは初めてのケースである。
当時前現場の都合上、代表池田と岡坂が行ったのだが二人して顔を見合わせた。
まずテレビや電子レンジなどの家電を残しておくように言われた。
しかし、こちらからは誰なのかもわからないし当時大家さんから鍵を預かり見積もりをしていたので、大家さんの立ち合いもない。
ましてや相見積もりでスターチスが作業するとまだ決まったわけではない。
なんとも言えない二人をまったく気にする様子もなく二人目の近隣様も会話に乱入なんでも前においてある、プランターの中の土が欲しいのだそうでずっと土と言われていた。
何とかなだめて見積もりを行うことに成功した。
見積もりが2階部分に差し掛かった時、私は違和感を覚えた。
1階の部屋は散らかっていたのに引き出しの中は綺麗に整頓されていた。
中には年金手帳や通帳などもあった。
しかし、2階はどうも様子がおかしい。
引き出しは無造作に開けられており、中もひっくり返ってあった。
極めつけは、シルバー1KGと書かれたアタッシュケースの中からシルバーが抜き取られていたのだ。
私は確信した。
見積もりに入った業者の中に、貴重品を漁ったところがある と
もしくは、近隣住民の可能性もあったがその可能性は、大家さんに見積もり金額を提示したと同時に消える。
「よそさんが10万円でやってくれるみたいやねん」
私は必死にこの業者が作業担当にならない様止めた。
なんとその業者は見積と言う名目で2度も住居に入っていたのだ。
この業界では決してありえてはいけないことを、大家さんが無知ゆえに許してしまったのだ。
どう考えても10万円で作業などできるはずがない。
確たる証拠は無いが、おそらくその業者は立ち合いがないのをいいことに
貴重品や貴金属類を漁って持って帰ったのではないかと思う。
それ以外に10万円で作業をする方法もなければ、消えていた貴重品も説明がつかない。
もし仮に見積もりを依頼する場合は、必ず立ち会うことをお勧めする。
そのような卑劣なことをする業者こそ少ないが、今回のようになくはない。
今回の業者の名前は聞くことが出来なかった。
説得の結果スターチスで作業をさせて頂くことになったのだが我々も、本来お客様が業者選びをするところに関与してしまったのは深く反省している。
今回の記事はここまでとし、次回相見積の後
作業編で詳しく書いていこうと思う。